鍼灸グループ活動報告

第2回報告

 グループ長 中村泰規
手の陽明大腸経は「歯脈」ともいわれ、口腔や顔面との関わりが深い経絡とされている。
その経絡上の合谷穴は比較的多くの方に馴染みのある経穴である。今まで合谷穴と歯痛の関係、円皮鍼の効果についての文献や発表は本学会のみならず、他の学会でも数多くみられる。しかし、今一度円皮鍼の効果について合谷穴を用い再検証するため症例を収集していく。

使用する円皮鍼: セイリン株式会社製 PYONEX(パイオネックス)0.6mm(黄)

症例及び方法: 処置前から疼痛を伴うものあるいは処置後疼痛が出現しそうなもので、

鎮痛消炎剤を投与すべきと担当医が判断した症例において、処置後(場合によっては処置前)より両側手の陽明大腸経合谷穴LI4に皮膚消毒後円皮鍼を貼付する。

入浴時は円皮鍼を外してもらい、入浴後エスクリンで皮膚消毒後再度新しいPYONEXを患者自身で貼付してもらう。

この時貼付場所を一定にするため、最初に円皮鍼を貼付する際に担当医は油性マジックにおいて合谷穴に印をつける。最初に貼付してから24時間後に円皮鍼を外してもらう。

評価方法: 10cmのVAS(visual analog scale)を用いる。24時間中で最も疼痛が強かった時を、記憶の中で最初にプロットしてもらう。そして、24時間後円皮鍼を外す際の状態をプロットしてもらう。

協力してもらう被験者の方には、担当医が説明を行い了解を得た後、同意書(雛型を作成する予定)に記入してもらい、「痛みを和らげるキット」(仮称)を手渡す。

 
※キット内容
 1)セイリン株式会社製 PYONEX(パイオネックス)0.6mm(黄)6個
 2)セイリン株式会社製 外皮消毒剤エスクリンONE 2個
 3)説明書(今回の検証目的を記した用紙(雛型を作成する予定)、
 セイリン株式会社作成の「使用方法」のリーフレット、合谷穴のわかりやすい図)
 4)VAS用紙 3枚(1枚目 24時間の中で最も疼痛がひどかった時のVASを記入。
  2枚目24時間後円皮鍼を外す直前のVASを記入。3枚目予備)
 5)鎮痛消炎剤服用の有無についての回答用紙
  ※1)2)はセイリン株式会社様のご厚意により提供して頂く

 
以上、症例を集積し回収したVAS用紙、鎮痛消炎剤についての回答用紙をどのように纏め上げるかを今後検討し、今年の本学会学術大会において経過報告を行っていく予定。

次回開催は3月18日(金)19:00~ 場所は未定。キットを作成して行く予定。ご協力頂ける先生は奮ってご参加下さい。

第1回報告

グループ長 中村泰規

去る11月26日(金)(株)ヨシダ本社会議室で鍼灸グループの1回目の会合が開かれました。今回の会合で、以下の内容のロードマップが話し合われました。

1)1.皮内鍼
  2.疼痛判定表
  3.患者説明用用紙
  4.効果報告用紙など
を1セットとした「痛みを和らげるキット」(仮称)を作り、特定の経穴に使用する。

2)次回会合までに、中村先生、関根先生が文献検索、経穴を決定し、キットの概要もメールで参加者に相談し決定する。

3)その後データの蓄積を開始して、次回大会でキットの効果を発表する予定。

4)成績がよければ、一般会員にも提供(販売)してさらにデータを蓄積し、国際大会で再度発表する。

グループ長からのコメント・・・

 歯科臨床の中で疼痛に対するコントロールを鍼灸で行う事を検討していく。
 当グループの構成員は、東洋医学の初学者の方から鍼灸師の資格を所持する方など様々である。
 また東洋医学の鍼灸というと経絡やら経穴といった複雑な概念や、どのように鍼をすればいいのかという事が、臨床導入する際の一番の壁になっていると思われる。
 そこで、誰もが臨床導入しやすい円皮鍼というものに注目した。円皮鍼は皮膚接触鍼であり、特に難しい術式は要しない。接触鍼は交感神経を抑制する効果があるといわれている。
 疼痛発生時には交感神経優位の状態になっているが、交感神経抑制により疼痛緩和されると考えられる。

 今回、我々はデータを収集し実際に接触鍼の効果を検証していこうと思う。そのために、症例選択、円皮鍼を貼る位置・期間、円皮鍼の種類、疼痛の客観的評価について検討していく。
 そしてその過程、結果を本学術大会において発表する予定である。
 鍼灸のエビデンス解明まで発展できれば本望であるが、最初から目標を高いところに設定すると継続が困難になったり、方法論が複雑で挫折する可能性も考えられ、今後のステップアップを踏まえて最も基本的なところから検証していこうと思う。

 既に円皮鍼についての効果は本学会のみならず全日本鍼灸学会等でも発表されているが、改めて検証することで歯科領域での応用をさらに裏付けるものとなり得る。
 そのような一つ一つの積み重ねが鍼灸をはじめとする東洋医学の立場をさらに押し上げるものと考える。
またそういう検証の蓄積を本学会から発信することで歯科界での応用基準なるものを確立して行けるのではないか。